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重ねる〜『初恋・お父さん、チビがいなくなりました』


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原作は西 炯子さんのコミック。2019年春に公開された映画です。

結婚して44年
息子一人、娘二人はすでにそれぞれの家と仕事を持ち、
昭和のオヤジ、絵に描いたような「関白亭主」の夫と
クロネコ・チビと暮らす初老の主婦(有喜子)。
しかしこのオヤジが、これでもかというくらい自分本位で喋らない 妻の話を聞かない
もちろん家のことなど何一つしない・・。
恐ろしいことですが? いるんですよね。
この時代になってもこういうジュラ紀の化石のようなオヤジ。
演ずる俳優さんは
演じながら思わずにっこりしたら、監督さんにダメ出しされたそうです。笑

「そんなことまでやってやらなくても」
というくらい夫に「世話」を尽くす有喜子さん。
でも夫はろくに話もしてくれない。
楽しい旅行の話を持ちかけてみても返事もしてくれない。
なんとかチビの存在だけが有喜子さんの心の拠りどころです。
ところがある日、その拠りどころのチビがいなくなってしまうのです。

実は有喜子さんには、密かに自分一人の心に秘めてきたある「不安」がありました。
チビがいなくなったことがきっかけになり、
その「不安」はどんどん有喜子さんを追い詰めていきます。

四十数年前の有喜子さんの「初恋」の思い出がモノクロで挿入されます。
たぶん昭和40年代頃、駅構内の「ミルクスタンド」での仕事。
通勤途中のサラリーマンが、立ち寄っては菓子パンと牛乳の「朝食」を買っていきます。

美人の先輩はテキパキと仕事をこなし、そつのない笑顔で客の応対をしています。
彼女は有喜子さんにも親切で、明るい女性。
ちょっと臆病で物静かな有喜子さんとはものの見事に対照的でした。

有喜子さんは、いつしか毎朝決まった時間に立ち寄る
一人の青年に淡い恋心を抱くのですが
青年はどうやら美人先輩が目当てで立ち寄っている様子。
やりがいもあまり感じられない仕事に迷いが出てきたころ
有喜子さんはお見合いを勧められ・・・。
さあ有喜子さんの初恋は やはり実らずに終わってしまうのでしょうか。

日本の夫婦はおかしなもので、子供ができるとなぜかお互いを
「おとうさん」「おかあさん」「パパ」「ママ」と呼ぶようになります。
夫婦の関係よりも親子関係が優先されるようになっていく、一つの現れです。
愛情表現が苦手、というよりも
若い頃から全くできないこの「おとうさん」に
有喜子さんはある日 意を決して言います。
「離婚してください」・・・

コミックのドラマ化、映画化で難しいのは
登場人物のリアルなパーソナリティーを上手く描けるかどうかです。
コミックは現実にはない背景やコマ運びを駆使して
読む側が忖度できる得な部分があります。
読む側は「これはフィクション」という大前提を踏まえていますから
話の展開に対しても寛大です。
でも映画となると、そうはいきません。
ベースはあくまでも現実社会です。
万人が納得する生活感のなかで、コミックでは見えていなかった
その人となりを上手く表現しなければお話に深みが出ません。
この点が この作品のちょっと残念なところでしたが
出演した俳優さんたちの演技力の深みはさすがでした。

歳を重ねて 年月を重ねて生きていく人間
重ねた分だけ愛情は愛情のままで深くなるのでしょうか?
それとも?

不器用な二人の「初恋」のお話です。
未見の方はぜひどうぞ。


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重ねた蝶々
春ですね〜

(パピヨンのボウル ALL SOLD)

Commented by ruriiro_ameri at 2023-03-26 18:39
鍵コメNさま

おそくなってすみません!
メールします〜〜〜
by ruriiro_ameri | 2023-03-15 22:00 | 映画のはなし | Trackback | Comments(1)

普段着の古物とシネマな日々


by ruriiro_ameri
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